会話中にスマホを見る部下…失礼すぎる?上司が取るべき対応5つ
部下と話している時、ふと相手の視線が手元のスマートフォンに落ちている…。そんな経験はありませんか。「自分の話は、スマホの画面より価値がないのだろうか」と、寂しさや苛立ちを感じてしまうかもしれません。会話中にスマホを見る部下の行動は、上司としてどう受け止め、どう対応すれば良いのでしょうか。
頭ごなしに「失礼だ!」と叱りつけるのは簡単ですが、それでは根本的な解決にはならず、関係が悪化するだけかもしれません。この記事では、部下の心理を紐解きながら、上司が取るべき対応を5つの具体的なステップで解説します。お互いが気持ちよく働ける関係を築くためのヒントが、きっと見つかるはずです。
なぜ?会話中にスマホを見る部下の3つの心理
部下の行動に苛立ちを覚える前に、まずは「なぜ、彼ら(彼女ら)はスマホを見るのだろう?」と、その背景に少しだけ思いを馳せてみることが大切です。そこには、あなたを軽んじているわけではない、意外な理由が隠されているかもしれません。
1. 悪気はない?メモやスケジュール確認の可能性
最も多いのが、実は悪気がないケースです。あなたとの会話の内容を忘れないようにと、スマートフォンのメモ機能に要点を打ち込んでいたり、その場で関連するスケジュールを確認したりしているのかもしれません。
特に、普段からデジタルツールでタスク管理をしている部下にとっては、スマホは仕事に欠かせないノートや手帳と同じ感覚です。あなたとの会話を真剣に聞いているからこそ、スマホに手を伸ばしている可能性も考えてみましょう。
2. 若手世代にとってスマホは「第二の脳」という価値観
デジタルネイティブと呼ばれる若い世代にとって、スマートフォンは単なる通信機器ではありません。知識を補い、記憶を補助するための「第二の脳」とも言える存在です。分からない言葉があればすぐに検索し、情報をインプットするのは、彼らにとって当たり前の学習スタイルです。
上司世代が「人の話を遮って調べるなんて」と感じる行動も、彼らにとっては「会話の理解度を高めるための前向きな行為」と捉えられている場合があります。この世代間の価値観の違いを理解しておくことは、無用な衝突を避ける上で重要です。
3. 会話への興味が薄い、または緊張しているサインかも
もちろん、ネガティブな理由が隠れている可能性も否定できません。話している内容に興味が持てず、手持ち無沙汰からスマホをいじってしまっているケースです。あるいは、上司との1対1の会話に緊張し、その気まずさから逃れるために、無意識にスマホに手を伸ばしてしまうという心理も考えられます。
いずれにせよ、その行動の裏には何かしらの理由があります。それを決めつけることなく、まずは冷静に観察することが、適切な対応への第一歩となります。
対応する前に!上司がやってはいけないNG行動
部下のスマホいじりを目にした瞬間、カッとなって感情的な行動に出てしまうと、事態は悪化の一途をたどります。部下指導のつもりが、パワハラと受け取られかねない危険な行動もあります。ここでは、まず避けるべき3つのNG行動を確認しておきましょう。
1. 人前で感情的に「失礼だ!」と叱りつける
他の社員がいる前で、大声で部下を叱責するのは最もやってはいけない行動です。部下のプライドを深く傷つけ、あなたへの信頼を完全に失わせてしまいます。
また、周囲の社員にも「この上司は感情的だ」という印象を与え、チーム全体の雰囲気を悪くする原因にもなります。指導は、必ず個別の場で行うのが鉄則です。
2. 理由も聞かずにスマホを取り上げる
まるで学生を指導する教師のように、部下のスマートフォンを取り上げるような行為は、相手を子ども扱いする侮辱的な行動です。部下の自尊心を傷つけるだけでなく、上司としての品位を疑われてしまいます。
もし、緊急の連絡を待っているなど、やむを得ない事情があった場合、取り返しのつかない関係の亀裂を生むことにもなりかねません。
3. 「最近の若者は…」と世代論で片付けてしまう
「これだから今の若い世代はダメなんだ」と、個人の問題を世代全体のせいにしてしまうのは、思考の放棄です。部下は「ひとりの人間」としてではなく、「若者」という記号として見られていると感じ、あなたに心を開かなくなります。
問題解決のためには、世代という大きな主語で語るのではなく、目の前の「個人」と向き合う姿勢が不可欠です。
会話中にスマホを見る部下へ上司が取るべき対応5ステップ
では、具体的にどのように対応すれば、部下との関係を壊さずに問題を解決できるのでしょうか。感情的にならず、冷静に、そして建設的に。ここでは、上司が取るべき行動を5つのステップに分けて、分かりやすく解説します。
1. 【ステップ1】まずは「何を見ているの?」と穏やかに尋ねる
部下がスマホを見始めたら、まずは非難するのではなく、興味を示すような口調で「何か調べてるの?」「メモ取ってくれてるのかな?」と穏やかに尋ねてみましょう。この一言で、部下に「あ、見られていたんだ」と気づかせることができます。
もし本当にメモを取っていたなら、その場で誤解は解けます。もしそうでなかったとしても、部下に行動を省みるきっかけを与えることができます。まずは決めつけずに、事実確認から入るのがポイントです。
2. 【ステップ2】1on1など個別の場で「私はこう感じる」と伝える
もし、その場で尋ねても行動が改善されない場合は、1on1ミーティングなど、他の人がいない個別の場で改めて話す機会を設けましょう。そして、「君がスマホを見ていると、私は少し寂しく感じるんだ」というように、「私」を主語にして自分の気持ちを伝えます。
「君は失礼だ(Youメッセージ)」ではなく、「私はこう感じる(Iメッセージ)」で伝えることで、相手は責められていると感じにくく、あなたの話を素直に受け入れやすくなります。
3. 【ステップ3】なぜその行動が問題なのか理由を具体的に説明する
ただ「やめてほしい」と伝えるだけでなく、なぜその行動がビジネスの場で問題となり得るのか、その理由を具体的に説明してあげましょう。例えば、「君にそのつもりがなくても、お客様からは真剣に話を聞いていないように見えてしまうかもしれない」といった具合です。
部下自身の評価やキャリアにとって、なぜその行動がマイナスになるのかを丁寧に説明することで、部下は自分事として問題を捉え、納得して行動を改めようとします。
4. 【ステップ4】メモの取り方など代替案を一緒に考える
もし部下が「メモを取るために使っていた」と主張するのであれば、そのやり方を否定するのではなく、より良い方法を一緒に考えてあげましょう。「それなら、一言『メモを取ります』と断ってから使ってくれると、誤解がなくて助かるな」「大切な話の時は、ノートとペンを使ってみるのはどうだろう?」など、具体的な代替案を提案します。
頭ごなしに禁止するのではなく、部下のやり方を尊重しつつ、より良い方向へ導く姿勢が、信頼関係を深めることに繋がります。
5. 【ステップ5】上司自身が会話中にスマホを見ない姿勢を示す
最後に、そして最も重要なのが、上司であるあなた自身が、部下との会話中にスマートフォンを見ないという姿勢を徹底することです。人は、言葉よりも行動から学びます。
あなたが部下の話を真剣に、目を見て聞く姿勢を示し続けることで、それがチームの文化として根付いていきます。部下の行動を指摘する前に、まずは自分自身の振る舞いを振り返ってみましょう。
パワハラにならない!関係を壊さない伝え方のコツ
部下への注意は、一歩間違えればパワハラと受け取られかねない、非常にデリケートなコミュニケーションです。ここでは、部下との信頼関係を壊さず、むしろ深めるための伝え方のコツを3つ紹介します。
1. 「私はこう感じる」とI(アイ)メッセージを主語にする
繰り返しになりますが、「I(アイ)メッセージ」は非常に有効な手法です。「(あなたは)失礼だ」というYouメッセージは相手を非難しますが、「(私は)少し悲しい気持ちになる」というIメッセージは、自分の感情を伝えるだけなので、相手は反発しにくくなります。
あくまでも自分の「気持ち」として伝えることで、部下は「自分の行動が、上司をそんな気持ちにさせていたのか」と、相手の立場に立って考えるきっかけを持つことができます。
2. 行動そのものを指摘し、人格否定はしない
注意すべきは、あくまで「会話中にスマホを見る」という具体的な「行動」です。その行動から飛躍して、「だから君は集中力がないんだ」「やる気がないんじゃないか」といった人格を否定するような言葉は絶対に避けましょう。
「行動」は変えることができますが、「人格」を否定されると、人は心を閉ざしてしまいます。指摘は、客観的な事実に限定することが鉄則です。
3. ポジティブな期待を込めて話を締めくくる
注意だけで終わるのではなく、最後は「君の意見をもっとしっかり聞きたいと思っているから、これからも頼りにしてるよ」というように、ポジティブな期待を伝えて締めくくりましょう。
「自分は期待されているんだ」と感じることで、部下は前向きな気持ちで行動改善に取り組むことができます。アメとムチではありませんが、厳しい指摘の後には、必ずフォローの言葉を添えることを忘れないでください。
チーム全体の課題として取り組む方法
もし、特定の部下だけでなく、チーム全体に同様の傾向が見られる場合は、個人への指導と並行して、チームとしてのルール作りや文化醸成に取り組むのが効果的です。ここでは、そのための3つのアプローチを紹介します。
1. 会議や打ち合わせのグラウンドルールを設定する
チームミーティングの冒頭などで、「この会議の目的とゴール」を共有するとともに、「会議中はスマホをマナーモードにしてカバンにしまう」「PCの使用は議事録担当者のみ」といった、全員が守るべきグラウンドルールを設定しましょう。
個人を名指しするのではなく、チーム全体のルールとして共有することで、誰もが角を立てずに問題に取り組むことができます。
2. コミュニケーション研修などでマナーの重要性を共有する
外部の研修サービスを利用したり、社内で勉強会を開いたりして、ビジネスにおけるコミュニケーションマナーの重要性を改めてチーム全体で学ぶ機会を設けるのも良い方法です。
第三者の視点から学ぶことで、上司から言われるよりも素直に受け入れられることもあります。また、世代間の認識の違いなどを共有する良い機会にもなります。
3. 良い行動を具体的に褒めて文化を醸成する
ルールで縛るだけでなく、望ましい行動を積極的に褒めて、チームの良い文化を育てていくことも大切です。例えば、会議で活発に意見を出してくれた部下に対して、「〇〇さん、今日はすごく集中して意見を出してくれて助かったよ。ありがとう」と具体的に褒めるのです。
「どういう行動が評価されるのか」が明確になることで、チームメンバーは自然と望ましい行動を取るようになっていきます。
なぜ会話中にスマホを見るのは失礼だと感じるのか
そもそも、なぜ私たちは相手が会話中にスマホを見ると、「失礼だ」と感じてしまうのでしょうか。その感情の根源を理解しておくことは、部下に理由を説明する際にも役立ちます。
1. 「あなたの話よりスマホが重要」というメッセージになるから
言葉には出さなくても、相手の行動は強力なメッセージを発します。会話中にスマホに視線を落とすという行動は、「今、目の前で話しているあなたよりも、このスマホの中の情報の方が重要です」という非言語的なメッセージとして相手に伝わってしまいます。
自分の存在価値が、スマートフォンのそれに負けたように感じてしまう。これが、私たちが寂しさや不快感を覚える大きな理由です。
2. 相手への敬意が欠けていると受け取られるから
コミュニケーションの基本は、相手への敬意(リスペクト)です。相手の話に真剣に耳を傾け、視線を合わせ、相槌を打つ。こうした一連の行動が、相手への敬意を示します。
会話中にスマホを見るという行為は、この敬意を欠いた行動と見なされます。「自分は尊重されていない」と感じると、人は相手に対して心を開こうとは思わなくなります。
3. 信頼関係の構築を妨げる大きな要因になるから
信頼関係は、日々の小さなコミュニケーションの積み重ねによって築かれます。一つ一つの会話を大切にし、相手に真摯に向き合う姿勢が、信頼の土台となります。
スマホを見るという、一見些細な行動でも、それが繰り返されることで、「この人は、自分の話を真剣に聞いてくれない人だ」という印象が積み重なり、信頼関係に少しずつひびが入っていってしまうのです。
部下の行動の裏にあるかもしれない、意外な理由
これまで、上司が取るべき対応を中心に解説してきましたが、それでも部下の行動が改善されない場合、そこには私たちが想像していない、もっと別の理由が隠れている可能性もあります。決めつける前に、こんな可能性も考えてみてください。
1. 緊急の家庭の連絡を待っている状況
家族が病気であったり、子どもが熱を出して保育園から連絡が来る可能性があったり。どうしても携帯電話を手放せない、やむを得ない事情を抱えているのかもしれません。
もし部下の様子がいつもと違うと感じたら、「何か心配事でもあるの?」と、プライベートに配慮しつつ、気遣う一言をかけてみることも大切です。
2. 会話の内容をその場で調べて理解を深めようとしている
特に専門的な内容について話している時、部下はあなたの話に出てきた専門用語や事例を、その場で検索して理解を深めようとしているのかもしれません。これは、非常に熱心で前向きな姿勢の表れとも言えます。
「もしかして、今の言葉、調べてくれてる?」と尋ねてみることで、部下の学習意欲を認め、より深い対話に繋がる可能性もあります。
3. 上司の話が長く、集中力が切れている
少し耳の痛い話かもしれませんが、部下がスマホを見てしまう原因が、上司であるあなた自身の話し方にある可能性もゼロではありません。話が冗長で要点が掴めなかったり、一方的に話し続けていたりすると、聞き手は集中力を失ってしまいます。
「自分の話は、簡潔で分かりやすいだろうか?」と、一度自身のコミュニケーションスタイルを振り返ってみることも、時には必要です。
それでも改善しない場合に試したい次のステップ
これまで紹介した方法を丁寧に試しても、残念ながら全く改善が見られないケースもあるかもしれません。その場合は、より毅然とした対応へとステップアップする必要があります。
1. 再度、チームのルールとマナーについて1対1で話し合う
まずは、もう一度1対1で話す機会を設けます。そして、以前に伝えたこと、そしてチームで設定したルールを改めて確認し、「このルールを守ることは、業務命令の一環である」ということを、前回よりも少し強い口調で伝えます。
これが、最後通告に近いものであることを、相手に明確に認識させる必要があります。
2. 部下の業務態度として人事評価に反映させる可能性を示唆する
それでも改善されない場合は、その行動が業務態度としての人事評価に影響する可能性があることを、具体的に示唆します。「このままでは、協調性や規律性の項目で、マイナスの評価をせざるを得なくなる」というように、客観的な評価基準と結びつけて説明します。
これは脅しではなく、部下の将来を考えた上での、組織人としての当然の通告です。
3. さらに上の上司や人事部に相談し、組織として対応する
個人の手には負えないと判断した場合は、一人で抱え込まず、さらに上の上司や人事部といった組織を頼りましょう。問題を共有し、会社としてどう対応すべきか、指示を仰ぎます。
個人の問題から組織の問題へとエスカレーションさせることで、より公式な手順に則った、適切な対応を取ることが可能になります。
まとめ
会話中にスマホを見る部下の行動は、上司にとって悩ましい問題です。しかし、その背景には、悪気のない習慣や世代間の価値観の違いなど、様々な理由が隠れている可能性があります。感情的に叱責するのではなく、まずは「なぜ?」と相手の状況を理解しようと努める姿勢が、解決への第一歩となります。
そして、注意する際は個別の場で、Iメッセージを使って具体的に伝えること。さらには、チーム全体のルール作りや、上司自身が手本を示すことで、誰もが気持ちよく働けるコミュニケーション文化を育てていくことができます。この一件を、あなたと部下、そしてチーム全体の信頼関係をより深めるための、良いきっかけと捉えてみてはいかがでしょうか。